【Rio PMP300回想】iPod以前に音楽を持ち歩いたMP3プレーヤー|32MBに詰まっていた未来 1998

デジタルライフ

今ではスマートフォンひとつで、音楽を聴くのが当たり前になりました。

Spotify、Apple Music、YouTube Music。
曲を買うというより、必要な時に検索して再生する時代です。

でも、そんな時代が来るずっと前に、
「音楽をデータとして持ち歩く」
というだけで、妙にワクワクした時代がありました。

その記憶の中に残っているのが、Rio PMP300です。

通称、Rio300。
iPodが登場するより前に存在した、初期の携帯MP3プレーヤーでした。

当時はMDの時代だった

Rio300を思い出す時、まず頭に浮かぶのはMDです。

当時の私は、秋葉原で買ったソニーのMZ-R3という録再両用のMD機を持っていました。
発売は1995年で、定価は5万円ほどだったようです。

今考えると、かなり高価な家電です。
それでも当時は、そういう機械に大きな期待を持っていました。

音楽を録音できる。
コンパクトに持ち歩ける。
カセットよりも新しく、CDよりも自由度がある。

MDは、いかにも当時の日本の家電らしい、完成度の高い製品だったと思います。

ただ、私自身はそのMZ-R3をあまり使い込んでいなかった気がします。

現在はMD本体も売却してしまい、MDディスクも1枚も残っていません。
確か、尾崎豊の曲を入れていたり、TRFの曲を聴いていた記憶があります。

それでも、MDは「音楽を持ち歩く道具」としては十分でした。

音楽を聴くだけなら、MDプレーヤーで何の問題もなかったのです。

Rio300との出会い

そんな時代に、私はRio300を知りました。

たぶん、雑誌かネットの記事だったと思います。
価格は確か、39,800円くらいだった記憶があります。

本体にはDIAMONDと書かれていました。

ただ、第一印象としては、MDほどメカニカルな魅力がある機械ではありませんでした。

デザインは至って平凡。
チープなプラスチック製のブラックボディ。
高級感があるわけでもなく、所有欲を強く刺激するような美しいガジェットでもなかったと思います。

接続も、まだUSBではなくパラレル接続
記録メディアもスマートメディアでした。

今振り返ると、なかなか時代を感じる仕様です。

でも、不思議なことに、私はそこに強い魅力を感じました。

なぜならRio300は、MDとはまったく違う方向を向いていたからです。

MDは、音楽を録音して聴く機械。
Rio300は、パソコンから音楽ファイルを転送して持ち歩く機械。

この違いが、当時の私には大きかったのです。

音楽を「ファイル」として持ち出す高揚感

Rio300の魅力は、音質でも容量でもありませんでした。

むしろ、音楽を聴くだけならMDの方が圧倒的に実用的だったと思います。

それでも私は、たぶん迷わずRio300を購入したのだと思います。

理由ははっきりしています。

曲をパソコンから転送するという作業そのものに、高揚感があったからです。

CDをパソコンに取り込む。
MP3ファイルにする。
聴きたい曲を選ぶ。
Rio300に転送する。
そして、朝の通勤で聴く。

今なら当たり前すぎる作業かもしれません。

でも当時は、音楽がディスクやテープから離れて、パソコンの中のファイルになっていく感覚がありました。

音楽を「モノ」として持つのではなく、
「データ」として扱う。

そのこと自体が新鮮でした。

32MBに詰め込んだ通勤時間

Rio300の内蔵メモリは、たしか32MB。
今の感覚では、スマホで撮った写真数枚分かもしれません。

でも当時は、その32MBに音楽を入れて持ち歩けるだけで、十分に未来的でした。

記憶では、ラルク・アン・シエル、反町隆史、椎名林檎、T.M.Revolutionなどを転送して、朝の通勤で聴いていたと思います。

今思えば、時代そのものが入っていたような選曲です。

容量が少ないから、何でもかんでも入れられるわけではありません。
今日は何を聴くか。
通勤中に気分を上げるならどの曲か。
限られた容量の中で曲を選ぶ必要がありました。

今のサブスクのように、無限に曲が並んでいるわけではありません。

だからこそ、自分で選んだ感覚が強かったのだと思います。

32MBという小さな容量の中に、自分なりの通勤用プレイリストを詰め込む。
その作業に、密かな楽しみがありました。

音質はたぶん最低だった

ただし、音質が良かったかと言われれば、たぶん良くなかったと思います。

付属のチープなヘッドフォンをそのまま使っていたので、音質はかなり厳しかったはずです。

当時、オーディオ担当者だった同僚からは、
「MDの方が圧倒的にいい」
と言われた記憶があります。

さらに、
「ヘッドフォンを変えた方がいい」
ともアドバイスされた気がします。

たしかに、その同僚の言うことは正しかったと思います。

音楽を高音質で楽しむなら、MDの方が完成されていた。
Rio300は、音楽プレーヤーとして見れば、まだまだ未完成でした。

本体の質感もチープ。
転送も面倒。
容量も少ない。
音質もヘッドフォン次第。

冷静に見れば、MDに勝てる要素は少なかったのかもしれません。

それでも私は、Rio300に魅力を感じていました。

それは音質ではなく、自分でファイルを操作して、音楽を外に持ち出す感覚が楽しかったからです。

MDは完成品、Rio300は未来の入口だった

今振り返ると、MDとRio300はまったく別の魅力を持っていたと思います。

MDは完成された家電でした。
録音できて、持ち歩けて、音も安定している。
日本の家電メーカーが作り込んだ、実用性の高い音楽メディアでした。

一方でRio300は、完成品というよりも実験機に近かったと思います。

デザインはチープ。
操作性も限られている。
容量も少ない。
接続もパラレル。
メディアもスマートメディア。

でも、その不完全さの中に、未来がありました。

「音楽はディスクから離れていく」
「パソコンの中のデータを持ち歩く時代が来る」
「自分で音楽ファイルを管理するようになる」

Rio300は、そんな時代の入口に立っていた機械だったのだと思います。

iPodより前にあったワクワク

その後、2001年にiPodが登場し、デジタル音楽プレーヤーの世界は大きく変わりました。

iPodは洗練されていました。
大量の曲を持ち歩ける。
操作もわかりやすい。
デザインも美しい。

音楽をデータとして持ち歩く文化を、一般の人にも広げたのはiPodだったと思います。

でも、私の記憶の中では、その前にRio300がありました。

完成度ではiPodに遠く及ばない。
でも、音楽をファイルとして持ち歩く楽しさを、早い段階で教えてくれた存在でした。

今のスマホ音楽時代から見ると、Rio300はとても小さな存在かもしれません。

けれど、あの時代にRio300を手にした時、私は確かに未来を感じていました。

まとめ:Rio300は、32MBに未来を詰め込んだ機械だった

Rio300は、便利な機械だったかと聞かれれば、正直微妙です。

音楽を聴くだけならMDで十分。
音質もMDの方が良かった。
本体の質感も高級ではない。
転送も手間がかかる。

それでも、私はRio300にワクワクしていました。

理由は、音楽を「データ」として扱えること。
そして、自分で選んだ曲をパソコンから転送し、外へ持ち出せること。

その行為そのものが、新しかったのです。

今は、スマホで何千万曲にもアクセスできる時代です。
でも、その便利さの前には、32MBの小さなメモリに曲を詰め込んでいた時代がありました。

Rio300は、私にとって、単なる古いMP3プレーヤーではありません。

MDの時代から、iPod、そしてスマホの時代へ向かう途中で出会った、
未完成だけれど、確かに未来を感じさせてくれた小さな黒い箱でした。

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